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国公立医学科地域枠推薦の離脱包囲網とは?

Jul. 02, 2022 その他

今年度から山梨県が設けた違約金制度が多くの国公立医学生を揺るがせている。山梨大医学科の地域枠の学生が、医師免許取得後に県内で9年間働くという約束を遵守しない場合、多額の違約金を求めるという全国初の厳しい締め付け制度だ。

山梨大医学科の定員125人の内、地域枠は35人、月額13万円の奨学金を6年間受け取る代わりに卒後9年間の県内医療従事義務を負う。離脱する場合は年10%の利息に加え、違約金追加で最大2340万円を一括で支払うことになる。山梨県医務課は「結婚、介護、子育て、家業の承継など個人的な事情については考慮しません」と地域枠推薦制度の説明に明記し、強い姿勢を見せている。

医学生で作る全日本医学生自治会連合(医学連)は11月「不当に厳しい、強制は人権侵害だ」と批判し、学生の声も取り入れた柔軟な制度設計を求めたが、山梨県医務課は「地域枠は2次試験免除や共通テストでの低い合格基準など、入試で一般枠よりかなり優遇されている「卒業後は地域医療に貢献する」という趣旨について志願者及び保証人の確約書まで交わしているのにも係わらず、昨年離脱者が2人出た。未然に防止するために違約金を課した」と説明する。

厚生労働省も全国で地域枠の離脱者が相次いだことから、17年に新人医師の初期研修を引き受ける全国の病院に、地域枠の医学科6回生約800人の実名リストをメールで配り「地域枠の学生には手を出すな」と警告。また19年には離脱者の研修を引き受けた病院の補助金を削減できる制度まで整えた。結果、地域枠学生は事実上、県外の研修先を選べなくなった。さらに今年2月専門医を認定する「日本専門医機構」が、都道府県の同意を得ずに研修を始めた離脱者を事実上参加させず、専門医として認定しない方針を打ち出した。

これらの離脱包囲網が張り巡らされてはいるものの、潜在的な離脱希望者は少なくないとされ、それが今回の違約金導入にも繋がった。山梨県は「奨学金を返しても、県が同意しなければ地域で働く義務はなくならない。義務は地域枠で入学が認められた時点で発生する」と強調する。

地域枠推薦制度の背景には、医師側が研修先を選べるようになった医師臨床研修制度があげられる。若い医師がより条件の良い都市部の病院を研修先に選び、母校の医局に残らなくなったのだ。研修医師の募集競争に負けた地方医学部は大学病院の医師確保のため、地域の病院に派遣していた医師を引き上げ、過疎地域での医師不足が表面化した。

地域枠の増設はこの穴を埋めるためだった。03年度に40人台だった地域枠の定員は、20年度には約1700人まで増えた。国公立医学科も今や一般選抜の定員は約3/4しかなく残りの1/4は地域枠を中心とする学校型推薦・総合型(旧AO)選抜となっている。また推薦は1浪までしか対象にしない場合が多く、医学科一般枠の偏差値の高止まりに繋がっている。

10年ほど前から緊急医療枠確保のために増やされた臨時定員の多くは地域枠で募集されてきた。本来は今年度から減員が開始される予定だったが、コロナ禍で延長された特殊事情がある。地域医療に貢献したい人、地元開業医の子弟など、一般枠で合格できる高い学力がありながら地域枠推薦を選ぶ学生が一定数いる。また、厚労省は2030年以降の医師過剰現象を予測しており、地域枠が削減されるとこれらの層が一般枠に流入して、医学科合格競争がさらに激化するだろう。

コロナ禍で増員打ち切りが持ち越された今年度の入試はチャンス!とみて、競泳で活躍した塾生は愛媛大学の一般枠推薦(現役対象)を前受けする戦略が成功した。折しも来年度から愛媛医は地域枠推薦の定員を20名から5名まで減員すると発表した。推薦入試は面接・出願書類の準備など若干手間はかかるが、前期入試と2回受験できる分、合格確率を上げられる。入試制度、配点、問題の傾向など多様性に富む国公立医学科入試では生徒一人ひとりの適性に合ったリアルな選択肢を早期からマッピングしてあげることで、受験への意識を高めることができている。