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九州の国立医学科の共テ合格ボーダー速報

Jan. 16, 2024 大学合格戦略

山口県は中四国だが北九州市と関門海峡で結ばれており九州の経済圏に属する。山口大学医学科も新山口駅前に校舎を構える北よびが断然強く、中四国全域から浪人生を集める高よびでも昨年の合格者はゼロだった。久留米大附設など九州の強豪校に攻め込まれ、県内トップ公立校の理数科生でも地域枠推薦以外で合格するのが困難になっている。北よびさんが大手予備校最速で九州の8つの国立医学科プラス山口医の50%合格可能性共テ合格ボーダーを発表したので分析してみた。

北よびが発表した50%合格可能性ボーダー共テ得点率を高い順に並べると昨年度と順位が大きく入れ替わっていた。九州医(900点満点でボーダー780点)に鹿児島医(730点)、佐賀医(728点)が続き、旧六医大の長崎医(720点)・熊本医(708点)が後塵を拝すというランキングとなっていたのには驚いた。

九州医:86.6%=(昨年86.6%)
鹿児島医:81.1%↑(77.7%)
佐賀医:80.9%↑(79.3%)
大分医:80.0%↑(77.7%)
琉球医:80.0%↑(76.6%)
長崎医:80.0%↓(82.2%)
熊本医:78.7%↓(80.0%)
宮崎医:78.3%↑(77.2%)
山口医:77.7%↑(76.6%)

番狂わせな難易度ランクになった主な要因は「あの分量を解き切るのは無理ゲー」と多くの受験生から悲鳴が上がった英語リーディング(R)だろう。王者九州医、上位に食い込んだ大分医・琉球医は英語R:L配点が1:1でリスニング(L)が9割取れていれば英語Rのマイナス度が軽く、トップ3入りした鹿児島医は広島医と同じく英語外部試験B2(英検準1級)レベルで共テ英語みなし満点、佐賀医も外部試験での加点制度がある。加えて鹿児島医・佐賀医は3:1配点とLの配点が高い。長崎医・熊本医、宮崎医・山口医と下位に沈んだ大学は4:1配点でR難化のダメージが1.6倍されたのが低迷した原因だろう。

しかし、ここまで英語リーディング難化の影響が大きいとは予想しなかった。大学入学共通テストでLの配点がRと同じ100点に増やされるのに対して、地方国立大学を中心にこぞってRの配点をセンター試験と同じ4:1に引き上げていた。九州No.2医学科である熊本医に毎年合わせて40名以上の合格者を送り込む熊本高校&こけい塾もおそらく精読重視の指導を行っていたのではと推測される。同じ旧六医大の長崎医がまだマシだったのは30名近く合格させる長崎青雲生の英語力のおかげでは。青雲は高校生には題材が難しいスピード型のTOEICを受験させているらしい。

英語外部試験B2で共テ英語みなし満点プラス、リーディング重視3:1配点の鹿児島医でシミュレーションしてみよう。昨年度2校合計で45名を鹿大医学科へ合格させたラ・サール男子、鹿大附属中→県立鶴丸高校の女子を例にして、苦手な英語をやらかしたラ・サールの太郎君がR60点・L80点だったとする。素点は140点だが3:1の傾斜配点で130点へ10点減価してしまう。一方、こつこつ英検準1級を取得してきた鶴丸の花子さんは英語みなし200点満点もらえるので共テ英語だけで70点もの差がつく。1点を争う国立医学科入試では圧倒的な得点差となるのだ。

では、どんな人が今回のリーディングでも9割以上とれたの?と聞かれれば、英語を日常的に使っている人と答えたい。ネイティブレベルの筆者はランチを食べながら入試にもよく引用される米TIME誌を斜め読みして大体理解することができる。今回の40ページに渡る第2代英語作問チームが残した力作も去年より時間が少し余分にかかっただけでno problemだった。大多数の純ジャパの高校生のように受験英語の範疇に英語の運用レベルが留まっている人にとってはtoo muchだったのは理解できる。

北よびの得点度数分布を易化・難化した科目を中心に見てみると、
(受験者数約4.3万人中、北よびは医歯薬系志望の理系がメイン)
900点中820点以上:109人→148人
数学IAで90点以上:885人→760人↓
数学IIBで90点以上:1893人→1177人↓
化学で95点以上:162人→235人
生物で95点以上:3人→12人
物理で95点以上: 898人→642人↓
地理Bで95点以上:10人→38人
世界史Bで95点以上:94人→117人
日本史Bで95点以上:59人→28人↓
国語で190点以上:253人→795人
英語で190点以上:263人→169人↓

以上、医歯薬系志望の理系メインの北よびのデータから言えるのは、
★去年大盤振る舞いした数学2科目、物理は理系でもやや難化
★生物は3年ぶりの易化で物理選択との差が縮小した
★英語はRで大半がやられた状況、Lで得点できたかで差がついた
★理系で国語が取れた人は大きく差をつけることができた

まとめると、国立医学科の志望者間では、物理と生物選択で差が縮小、数学で失敗した人が増加、地理・世界史選択が日本史・公民選択よりやや有利、配点の高い英語・国語で取れた人が差をつけたと読み取れる。英語リーディングは3年連続難化、新たな作問チームも対策潰しを引き継ぐとの予想から来年度も難化継続注意報。予備校に溜まっていた生物選択者がやっと浮かばれた。昨年4%だった旧帝医大の九州医と旧六医大の長崎医の差が約7%に拡がったことから、最上位層とその下の上位層の間に更に断層が拡がった模様。

志望者の得点分布グラフや選択科目の度数分布も読めない文系教師の進路指導で大丈夫なの?と思う。岡山の高校は公立も私立も挑戦させるのがデフォルトのようだが、他県と比べると浪人率が格段に高い。伝統校の補習科から今春の東大理系復活者が0名に終わるなど、浪人してもさほど有利にならなくなった入試に変貌してからチャレンジ精神が裏目に出ているのではと感じる。受験は自己責任なので挑戦させて失敗しても生徒本人の自己責任だ。しかしながら、学校も保護者もみんな挑戦だと生徒は冷静な判断ができないだろうから、敢えて現実的な客観データを提供するのも大学受験塾の使命だと考えている。