2025国公立医学科への合格力(岡山編)
今春岡山県内の高校で国公立大学医学科合格者(重複合格でき殆ど進学していない防衛医合格者を除外)を5名以上出せたのは、
1.岡山朝日33名(現役12名)
2.岡山白陵15名(現役5名)
3.大安寺中教10名(現役5名)
4.津山7名(現役3名)
5.倉敷天城6名(現役3名)
6.岡山操山5名(現役1名)
の6校だった。岡山芳泉が得意の推薦(今年も岡大合格者数全国トップ)をフル活用し4名、倉敷青陵が3名、岡山学芸館(清秀)・岡山一宮が2名ずつ、1名合格は岡山城東、倉敷南、笠岡、就実HG、明誠学院、岡山高校で岡山県からは計16校(昨年は12校)が合格者を出していた。今年も地元岡山医をはじめとする国立医学科入試は全国の受験生が入り乱れる大混戦で、県内最大手塾のNセンターの医学科受験者がほぼ壊滅した噂があったり岡山の現役生は苦戦し例年よりはるかに多くの浪人が出た模様だ。注目点は次の通り
★岡山朝日最上位生の大健闘
朝日の塾生から共テ模試の得点分布表を見せてもらっていたが今年の朝日生は過去5年間で最も優秀な学年だった。本番でも昨年10名位しかいなかった9割以上が20名以上、8割台に70名以上と情報Iのご祝儀相場、国語・英語Rの易化があったとはいえ躍進が期待された。京都医、九州医に1名ずつ、大阪医に2名と旧帝医学科に4名、共テボーダー95%と全国最高の東京科学(旧医科歯科)大後期に2名が現役合格と神がかった学年だった。岡山医は昨年の14名から地域枠2次募集1名を加えても9名(前期8名)と1桁に減らしていたが、岡山大の英語検定試験C1レベルで医学部医学科では英語1次・2次500点満点という不透明な入試を上位層が避けた結果なのかもしれない。東大21名(昨年11名)、京大14名(3名)と昨年は生徒数が半数の大安寺中教に抜かれていたが今年は大差をつけて岡山県トップを奪還した。国公立医学科合格者数は浪人生が奮闘した(塾生は高よびから岡山医、高知医で雪辱)おかげで計33名(昨年比4名増)と全国の公立高校6位まで伸ばしていた。一方、最上位生以下の現役ミドル層が昨年に続き山陰・四国の医学科で全滅したりして現役合格は12名と前年比2名減らし、前期現役合格3名のみに留まった岡山医出願者を中心に他校と同様、多数の浪人が出た模様。岡山医に上位合格した朝日卒の塾生から得点開示を見せてもらったが、合格者最低点=昨年の合格者平均点まで合格難度が上がっていた。東海、灘、東大寺、甲陽、北野、渋幕、日比谷など旧帝医学科レベルを目指す強豪校から落としてきたライバルのレベルが高く、検定試験C1で英語満点もらえた人以外は2次数学では4問全完近くできてないと相対評価で合格枠に入れないハイリスク入試だった。
★岡山の中高一貫校の低迷
昨年14名(現役12名)と東大合格者数と共に勢いがあった大安寺中教の国医合格者数は10名(現役5名)と大幅減、特に昨年6名(現役5名)合格していた岡山医が2名(現役1名)と激減した。中学受験で大安寺を選ぶ人が増えて下落傾向だった岡山白陵はついに底抜けした感じで国立医学科15名(現役5名)、岡山医は3名(現役1名)だけだった。センター試験時代は10名以上岡山医に合格させ全国最多合格者数を続けていた岡白は凋落が止まらない。中学受験で生徒を奪い合う両校が揃って崩壊したということは、6年前の中学受験組の最上位層は中高一貫校ではなく岡附中→朝日の黄金ラインを選んだ人が多かったことを意味する。岡山伝統のエリートコースは今なお健在だ。昨年愛媛医に合格した塾生が卒業した岡山操山の内進生は未来航路という探求プロジェクトを課される。中学受験を勝ち抜いた内進生120名中現役合格した1名(琉球医)しか医学科志望者がいなかったわけはなく相当数の医学科浪人が出たはずだ。操山は高入生の進度に内進生を合わせるという私立中高一貫校(私立では毎日必死で延長授業をして高2で内進生に追いつかせる)ではあり得ない非効率なカリキュラムで、同じく国立医学科役合格者1名(山口医)に留まった広島の県立広島中高も含めて特進クラスを持たない公立併設型中高一貫校の限界が露呈されていた。
★倉敷勢の健闘
高校から半数を募集する岡山操山と同じ併設型中高一貫校である倉敷天城は津山中高と同様に中学内進生上位を理数科に囲い込んで先取り教育している。昨年は現浪含め国立・私立合わせての医学部医学科の合格者が1名のみと不振だった。残念だった浪人生が九州医・岡山医などに合格し、現役生も岡山医・香川医、鳥取医に合格して国医合格者6名と倉敷学区トップの青陵を上回っていたが、倉敷青陵も昨年ゼロだった岡山医に2名合格させ伝統校の意地を見せた。なお当塾から愛媛医に現役合格した広福女子は東進倉敷駅前校で唯一の国立医学科合格者だった。
★私立高特進コースの不振
土曜日も午後まで授業があり授業時間は岡山最長を誇る就実HGは昨年度岡山医3名を含む6名まで国医合格者を増やしていたが今年は現浪合わせて高知医1名だけの様子。思考力重視の共通テストは単に時間をかけても伸びるわけでないことが実証されていた。地元予備校のS学院のように岡大医学科に受かると6年間の学費を出してくれる明誠学院特進3類も昨年は計5名(岡山医1名)合格させていたがS学院多浪生?の宮崎医1名のみだった。
★最上位層とその次のレベルが分断
岡山朝日は今年東大21名、京大14名と見事な復活をとげた。医学科現役合格者のうち京都医・大阪医・九州医などの旧帝医学科、同じく最難関の東京科学大・神戸医の合格者に岡山医前期の3名を加えた上位1桁はスペシャルだと言えよう。しかし、次の理系上位が四国や山陰の国立医学科に現役で受かっていない。中学・高校受験で有名私立にW合格した最上位層とその下の上位ミドル層の差が大きい。努力がある程度報われたセンター試験とは異なり、凄くできる子と普通にできる子を振るい分ける共通テストの特性が現れていた。都会の中高一貫生も現役志向となり高知医などの地方国立医学科にも容赦なく落としてくるため(塾生3名が進学した愛媛医にも横浜のフェリス女子から今年2名合格)、岡山県内の現役生がこれまで合格者数を稼いでいた四国の4医学科で大きく減らしたのが現役合格者激減の主な要因だろう。
岡山県内の高校から今年度国公立医学科に合格できたのは現浪合計90名前後(昨年度約100名)、浪人生は踏ん張って昨年比10名増の50名半ば、現役生は前年の約60名から30名後半に激減したと推定される。高よび生の共テ平均点の高さに示されたように新課程入試年の経過措置で旧課程の数学、地歴公民、情報を受験できた浪人生の方が有利だった。現役で国公立医学科に合格できた確率は岡山の県立高校生が実施する進研模試の受験者約7000名中0.5%台まで下がるという厳しい結果だった。県内の直近4年間の国医現役合格者数は平均60名前後だったので、同じ成績レベルに相当する東大、京大上位理系学部合格者も含めると理系3科目型で県内上位1%以内に常時入っている順位が国公立医学科現役合格圏の一つの目安となるであろう。
今春の入試結果を見て今年も3名の国立医学科現役合格を託される身としては不安が尽きない。現役合格者が激減したラ・サール、愛光など私立有力校で国立医学科をギリ落ちた強力な浪人生が例年より数多く待ち受けており、少ない定員を争う椅子取りゲームの医学科入試では数3Cや理科の仕上がりが遅い現役生にとって大きな圧力となるからだ。各高校で学年毎にカラーが異なり表の年の後は裏の年となる隔年現象が見られる。そんな受験のアノマリーにも抗って今年も塾生全員の受かる可能性を1%でも高める現役合格戦略を描いていきたい。